世界一の加工技術、山梨・甲府の一級研磨師が 一つひとつの製品を丹精込めて手作りします

★山梨の水晶

山梨の研磨宝飾は、昇仙峡の奥、金峰山一帯を中心に産出した。原石が発見されてからおよそ一千年以上、研磨工芸が発 祥してから約170~180年という伝統を誇っている。いまでは、独のオーベルシュタインと並んで世界の二大研磨宝飾工業の産地といわれるまでに大成した のであった。
加工のはじまりは、170年前の天保年間(1830~43)に御岳の神官が、京都の王屋弥助に教えられてはじめた王造りであったということが従来の定説で あったが、その後の調査で、縄文時代狩猟に用いられた石鏃(いしやじり)が東山梨郡下で出土したことがわかった。水晶の加工もはるか悠遠な先史時代までさ かのぼるものであることが明らかになった。

★山梨での加工は、手による加工

江戸時代から続いた山梨の水晶の伝統的な加工技術は、手による加工、つまりハンド加工である。それは驚くほど精巧で芸術性の高い繊細な技術であった。
加工職人たちは昔から厳しい師弟関係のなかで、何十年も修行を積み重ねながら素晴らしい技術を磨き上げました。

★熟練した腕と勘が要求される作業

山梨の作業現場
驚くほど精巧な技術! 山梨の作業現場

手による加工、ハンド加工は、最初に原石を選別するところから最後のみがきをかけるところまで、いくつかの段階を経て進みます。
まず、研磨の職人は、「割(か)っこみ」屋さんに原石を持っていきます。最近は、機械で切断してしまうこともありますが、水晶本来の性質を生かすには、や はり「割っこみ」がいちばんいいのです。ここでの作業は原石の目の向きが分からないとうまくいきません。水晶は六角柱状ですので、それにそって梁(はり) を刺し、小さなハンマーでたたきます。すると驚くほどうまく割れます。この「割っこみ」がうまくいっているものほど、その後の作業がやりやすくなります。 この作業のできる職人は今ではかなり少なくなっています。
そして、この石を自宅の工場にもちかえり、研磨の作業に入ります。研磨作業には4つの工程があります。まずは、「荒摺(あらず)り」で大まかな形をつくる。その後「二番摺(ず)り」「三番摺り」「砂摺り」と繰り返しながら、カットをより精密にしていきます。
最後に「磨き」をかけて水晶に透明感と艶を与えます。特に山梨で行われてきた「磨き」は独特で、けやきの木を輪切りにして木口を使います。木口に酸化クロムを付け、それを高速回転させながら押しつけて摺り上げていくのです。
実は、最後の「磨き」が、最も重要で、外国でカットしたものと比べると、照(て)りで大きな差が出てきます。
最後に、水晶をカットする人のことを、甲府の職人の間では、切子(きりこ)屋さんと呼ばれています。

★年々少なくなりつつある原石

しかし、水晶の都、山梨でも、天然の原石は年々少なくなりつつあります。ここで紹介する水晶は、そんななかから厳選された極めて珍しい無キズのAグレードの天然水晶です。

文献
『水晶宝飾史』昭和45年5月刊(甲府商工会議所 非売品)
『クリスタルの秘密』(コスモ21刊)